昨年二月の金融株の暴落は、銀行が不良債権の償却を進める一方で、実際は公表数字の何倍もの不良債権が隠されているのではないかという不安が背景にありました。邦銀では唯一ニューヨーク証券取引所に上場している東京三菱銀行株でさえ、公表数字は信用できないという外国人投資家からの売りで暴落したのです。ましてや他行の数字はもっといい加減なはずですから、日本の金融市場そのものの信頼性がまったく失われてしまったと考えるべきでしょう。公表数字が嘘だったことがばれたときの海外の反応は相当厳しいものがあります。かつては一○○兆円はあるというのが定説だった不良債権額も、ここで新たな時価評価をしてみればその二倍は下らないかもしれません。これだけ資産価格が下がり、倒産と失業が増え続けるなかで、大蔵省も銀行の頭取も、不良債権の実態を把握できていないというのが実情でしょう。おそらく、戦時中の大本営発表もこんな形で情報の隠蔽が行われたのではないでしょうか。有名な話では、ミッドウェー海戦で日本軍は空母四隻と三○○機以上の航空機とその搭乗員を多数失いましたが、大本営発表では、日本軍の被害は空母と巡洋艦が一隻ずつ、航空機三五機だけで、逆にアメリカ軍の被害は、実際には空母一隻を撃沈しただけなのに、空母二隻撃沈、航空機一二○機以上撃墜と、まるで勝ち戦のように騒いだそうです。

